最初にご夫妻にお会いしたのは2018年の暮れごろだと思いますが、その暫く後に弊社の事務所に来てもらってお話を始めた際に、山形県内のとある神社に関する件でご主人と話が盛り上がり、お互い熱狂のあまり、お住まいの改修計画の打ち合わせにならずに初回が終わってしまったことも鮮明に記憶しています。その後順調に1期工事の設計・改修施工が進み、そもそも大きな既存併用住宅の南側三分の一部分が住居の体を成しました。

その後暫くして2020年の後半、1階北側半分のカフェ・雑貨店舗「十三時」部分の計画と改修を行い、2021年にオープン。そして今回、特に断熱性能に問題のあった2階のオープンスペース部分と1階水回り部分の改修に踏み切り、3期にわたる建物の改修計画と工事がひと通り完了しました。

6年間余りにわたる段階的な計画と工事のお付き合いの中で、実に様々な交流があり、私達としても西川町という場所全体との関わりも少しずつ濃密になっていきました。
訪問する都度に、山岳信仰や文化・芸術のお話しを深めつつ、山間地域の良さと問題についても実感として感じ取られるようになっていきました。少し大袈裟に言えばその実感と意識がこの一連の既存建物の改修計画・工事の要所要所に反映されていると思っています。そもそも存在している空間については尊重し、快適なものに。あまり気張り過ぎず、大らかに。しかし物の収まりは緻密に、丁寧に。 そのようにしてこの建物は数年間を経て、より依頼主らしい住まい・店舗の空間へと変わって行ったのです。

この建物の一連の計画においても、国や自治体の補助制度を活用しました。この補助金の考え方としては、個人所有の住宅や店舗なども一定の社会ストックとみなし、断熱改修等によって建物の省エネ性能などを向上させることを目的としている訳ですが、改修計画・工事により良質な社会ストックの構築という社会便益性に直接寄与することもさながら、依頼主個人との関係の中で、少しだけ個人を越えた「地域性」を意識しながら計画することによって、ある意味でより上質な空間的価値を創出できるのはないかと考えています。

 

データ(敬称等略)

設計施工 加藤建築

木材  安孫子製材

木工事 加藤建築

屋根板金 宗田板金工業所

サッシ やまぶきEX

木製建具 後藤建具店

塗装 長岡塗装

内装 マストアーム

電気設備 小野でんき

衛生設備 永山設備

冷暖房設備 イースト設備工業

各所クリーニング 環衛創美社

 

2018年~2024年