山形市内の製材業さんの作業場。長年の経年劣化と雪害に伴う屋根・小屋組構造・外壁まわり等の改修工事です。
既存の小屋組は木造で、一部鉄骨で補強されていましたが、雪害で構造全体が歪み、接合部も多少なり危険な状況にありました。またこのような製材工場等の建物は広いスペースを必要とするため、小屋組には大スパンが要求されます。構造を補強しながらより使いやすい作業場となるようにと苦心しました。 補強箇所の梁間スパンは3.5間ですが、中通りの桁で荷重を支持するため支柱を数か所増やし、既存の梁桁の下部に新規の梁桁を設置してダブルの斜材で挟み込み、張弦梁のような構成の梁構面としましたが、既存の登り梁自体の劣化を考慮して均等スパンで下梁と束材で結び、はしご状の構面として接合部を補強。構面全体の曲げ梁としても効くように計画しました。
8mの集成梁を既存の小屋組に人力で差し込んで設置していく作業や精度の要求される鉄部との接合は難易度が高いものでしたが、大工や鉄工さんの卓越した技術でそれを難なく乗り越えました。毎回感じることですが、やはり計画・材料・技術の連携とバランスが大事です。
外装については、程よい明るさを確保するため、上部に透明のポリカーボネード板を使用し、下部は赤ザビ色のガルバリウム鋼板で全体を被うことで、作業場全体として統一感を持たせました。
この改修工事の期間は、丁度ウッドショック時にあたり、当製材所さんとしても杉の丸太がなかなか入手困難な時期でした。コロナ禍中のアメリカでの郊外居住化住宅需要拡大に伴う米松等北米材の日本への輸入量不足によって市場への輸入木材供給が滞り、これに伴って業界内で国産材の需要が急激に高まった結果、劇的な価格高騰を招きました。皮肉なことにウッドショック以前は国産材に対して米松材等輸入木材の単価がずっと安く、コスト原理によって国産材・地域産材が使いにくい状況でしたが、ウッドショック以降ある程度構造材の価格は高止まりしつつ、多少なり単価割合としてはバランスが改善されました。しかし、林業・製材業などの人出不足、単価の安さ等の問題は農業同様根本的には依然として改善されておらず、エンドユーザーに近い私達建築業界の人間が、このような台車引きでの製材業さんの実態と魅力をもっと市場にアピールしていくことも大切なのだと感じています。
データ(敬称等略)
設計施工 加藤建築
木材 安孫子製材
木工事 加藤建築
鉄工事 カンノウェルディング
板金工事 五大建板
塗装 長岡塗装
電気設備 小野でんき
2023年