山形市の六日町教会にて、「山形のレーモンド100年記念シンポジウム-千歳幼稚園(現・千歳認定こども園)の建築-」を開催いたしました。
山形のレーモンドをめぐる旅の始まりは、スタジオ香川の香川さんの「千歳幼稚園(現・千歳認定こども園)の園舎がレーモンドの設計によるものだったという記録の根拠を確かなものにしたい」というお話からでした。私たちもとても興味深く、もし地域に眠る資料が出てくるならということで資料探しが始まりました。幼稚園はもちろん、六日町教会、県立図書館、教育資料館などから手がかりを探し始めました。
資料探しの旅が動き出したのは2019年の冬のこと、幼稚園の母体となる山形市の六日町教会で古い資料を見せていただいたことが始まりでした。私たちが探しているレーモンドが設計した幼稚園の図面や写真はなかったものの、大正から昭和期にかけて当時は珍しかったであろうキリスト教の幼稚園の写真は非常に胸が熱くなる思いがしました。レーモンドの園舎そのものの写真は難しいかもしれないけれどレーモンドの妻であるナオミレーモンドが設計した家具などが写真に残っているのではないか、現物が残っているのではないかという話にもなりました。
現在の園舎はレーモンドが設計した園舎の場所からほど近い場所に移転しています。古くから幼稚園にお勤めされている方への聞き取りや、幼稚園に残されている古い家具なども見せていただきました。
その後、六日町教会の牧師さんのご配慮で仙台の東北学院史資料センターにお伺いする機会を得ることができました。当時の山形での宣教活動の母体が仙台の東北学院であったためです。当時の宣教師団がアメリカ本部への活動報告をしていたリーフレットのコピーなどの約100年前の資料を見せていただくことができました。リーフレットには1922年に山形に新しくできた幼稚園として千歳幼稚園が写真付きで紹介されていました。外観写真やとても珍しいアメリカ本部への報告用の動画資料も見せていただきました。もちろんすべて英語での資料でしたが、動画は特に当時の幼稚園の行事の様子などの子どもや先生方のいきいきとした表情をみることができました。設計者についての明記はありませんでしたが、年代的にも動画に記録されている内観の様子は、レーモンド設計の幼稚園の内観で間違いないと確信を得た機会となりました。
2022年はちょうど山形のレーモンド100年記念の年となります。
まだまだ地域に眠る資料を広く探したいという思いもあり、これまでの資料をみなさんにご報告し語り合う機会としてシンポジウムを開催することとなりました。
小さな点のようなご縁が広くつながってこのような機会をいただくことができて大変嬉しく思います。
シンポジウムは終わりましたが、レーモンドの旅はまだまだ続きます。
なぜ山形にレーモンドの設計の幼稚園があったのか、引き続きレーモンドの足跡を追って宮城県、岩手県へと足を延ばしています。
————-シンポジウムについて————
1919年に帝国ホテル建設のため巨匠フランク・ロイド・ライトの助手として来日したアントニン・レーモンドは、仕事半ばでライトの元を離れ独立し、日本で自らの仕事を始めた。最初期の仕事のひとつが山形市の千歳幼稚園と記録されているが、建物はすでに無く資料も失われており、その姿は分かっていないとされていた。
本シンポジウムは、近年になって見つかった竣工当時の資料を元に千歳幼稚園の建築について語り合い、さらなる資料の発掘を地域の皆様に呼びかけるものである。
なお、2022年は千歳幼稚園レーモンド園舎は築100年にあたり、記念品としてレーモンドがデザインした椅子を復刻し、千歳認定こども園に贈呈する。
※レーモンドの園舎は既存していません。
レーモンドの三角椅子複製の記事はこちら
開催日時:2022年9月25日 15:00~17:00
会 場:山形六日町教会(1914年の木造教会) 山形市旅籠町3丁目3-34
当日スケジュール:
◆基調講演「事務所創成期のアントニン・レーモンド」/三浦敏伸(レーモンド設計事務所代表取締役)
◆レクチャー1「レーモンドが設計した千歳幼稚園について」/香川浩(スタジオ香川)
◆レクチャー2「三角椅子の複製」/加藤英司(加藤建築)
◆記念品贈呈式
主催 スタジオ香川、株式会社加藤建築
協力 千歳認定こども園、山形六日町教会、東北学院歴史資料センター、株式会社レーモンド設計事務所
後援 (一社)DOCOMOMO Japan、(公社)日本建築家協会東北支部山形地域会、(一社)日本建築学会東北支部山形支所